2015年10月19日(月)
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「テープ起こし」という言葉がある。インタビュー時に録音しておいた音声を書き起こす行為を指す。録音といえばICレコーダーになったが、あいかわらずこの言い方が使われてる。
似たような例に「巻き戻し」があるが、これは「早戻し」の呼び名に変わって久しい。はじめは違和感があったが、いまや思うのはむしろそもそもなぜ最初から「早戻し」じゃなかったのだろう、といことだ。 だって「早送り」に対応するのは素直に考えて「早戻し」だ。きっと "rewind" の和訳だったんだろうと思うんだけど、英語担当者はなんで "wind" を使ったのか。そりゃ確かに巻いてるけど、テープの挙動はユーザーには関係なくないか。再生だって早送りだって巻いてるし。 さて、「テープ起こし」に変わる、というかもともともうひとつ言い方があって、それが「文字起こし」だ。なるほどこれならメディアがテープだろうがシリコンだろうが関係なくてよい、と思ったが、別の疑問が頭をよぎる。
「テープ起こし」と「文字起こし」が意味同じっておかしくないか。だってテープは起こされるもので、文字は起こされたものだ。「テープ(から)起こし」と「文字(に)起こし」なわけで、テープと文字はいわば出発点とゴールみたいなものだ。なのに同じ「○○起こし」なのはへんだ。
てなぐあいに、おこしおこし、と唱えていたら当然のことながら「雷おこし」を連想して、そういえばあれはなんでおこしなんだろう、と思って語源を調べたら 「家を起こす」「名を起こす」をかけた縁起物として、および「雷よけのおまじない」などの謳い文句で売られた
とあった。
いやいや、(家を)「起こす」と(雷を)「避ける」は意味的には反対っぽいよ? さらっと以上説明終わりみたいな顔してるんじゃないわよ。
すべてはよく分からないままだが、ひとつだけ分かったのは「起こし」は何かと大胆に矛盾しがちだ、ってことだ。「ぞっとする」と「ぞっとしない」が同じ意味なのに似てる。あれもへんだよねえ。 (総裁談) | | |