2014年11月08日(土) 
小学生のとき、同じクラスにそれは絵がうまい友人がいた。あるとき市主催か何かの絵画コンクールがあり、彼の絵が出品されたが、入選しなかった。大賞を取ったのは誰が見てもはるかにへたくそな絵だった。不思議だった。
 
ところで、「ぎなた読み」という言葉がある。文章の区切り位置を誤って読んだ結果、意味が変わってしまうことを指す。有名なものに「ぱんつくった」がある。「パン作った」のぎなた読みが「パンツ食った」ということだ。子供の頃こういう話題で盛りあがったことがあるだろう。ほんと子供ってバカだなあと思う。

なぜ「ぎなた読み」というのかというと、「弁慶が、なぎなたを持って」を誤って「弁慶がな、ぎなたを持って」と読んだ人がいたからだという。

この言葉を知った時からずっと思っていたのは、なぜこれを代表例にした、ということだ。「弁慶がな」で区切るの無理がある(*)し、「ぎなた」の時点でその区切りはないな、ってなるだろうふつう。

前出の「ぱんつくった」のほうが誤読もむべなるかな、という納得性がある。ほかにも「ここではきものをぬいでください」という名作もある(「ここで履き物を脱いでください」/「ここでは着物を脱いでください」)。なぜ弁慶を選んだ。なぜ「ぎなた」。

しかし、考えてみれば不自然だからこそこれを名前にできたのだ。「ぱんつくった」「ここではきものをぬいでください」はどちらが誤読か文章だけでは判別できないほどの完成度を誇るがゆえに、固有名として採用できない。「ぱんつ読み」「はきもの読み」ではそれこそ意味がわからない。「ぎなた」に無理があるからこそ誤読感が伝わるのだ。

つまり、ぎなた読みとして完成度が低いからこそ代表例になりえたということだ。

今思えば、同級生の絵は、あまりにうますぎたのだ。求められていたのはあくまで小学生らしさであり、大賞を取った絵は、完成度が低いからこそ選ばれたのだと思う。

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*「弁慶がナ」って「な」をカタカナにするとサザエさんっぽい。
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(総裁談)
 
 

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